もしも宇宙船に乗って、火星へ行けるとしたら。
その旅はきっと、想像しているよりもずっと静かで、ずっと長い時間になる気がする。
窓の外には、ただ広がる深い闇。
星は無数に瞬いているのに、どこか音のない世界。
地球にいた頃の「夜」とはまったく違う、完全な静寂。
時間の感覚も、少しずつ曖昧になっていくかもしれない。
朝も夜もはっきりせず、ただ機械のリズムと自分の呼吸だけが、
現実をつなぎ止めてくれる。
そんな中でふと、地球のことを思い出す。
当たり前に見ていた空や、風の匂い、遠くの生活音。
あれは、とても豊かな世界だったんだなと、
離れて初めて気づくのかもしれない。
そして長い旅の先、火星が見えてくる。
赤く、乾いた大地。
どこか寂しさを感じる色なのに、不思議と目が離せない。
実際に降り立ったら、きっと静けさに包まれる。
風はあるのに、音がほとんど届かないような、不思議な感覚。
足跡だけが、ゆっくりとそこに刻まれていく。
そのとき、自分は何を思うんだろう。
「すごい」と感じるのか、
それとも「帰りたい」と思うのか。
もしかしたら、そのどちらでもなくて、
ただ静かに、この瞬間を受け止めるだけなのかもしれない。
もしも宇宙船で火星へ行けたら。
それは冒険というより、自分自身と向き合う旅になる気がする。
広すぎる宇宙の中で、
自分がどれだけ小さくて、でも確かに存在しているのか。
そんなことを、ゆっくりと感じる時間になるのかもしれない。
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