2026年7月15日水曜日

もしも三国志の三国志 許褚を神格化したら

もしも三国志の三国志 許褚を神格化したら

夜の大地を、重い足音が揺らしていた。

戦場には折れた槍と砕けた盾が転がり、遠くでは赤い炎が風にあおられている。

その荒れ果てた地の中央に、巨大な男が立っていた。

許褚。

かつて曹操のそばを守り続け、虎のような力を持つと恐れられた武将である。

だが、その夜の許褚は、もはや人の姿だけには見えなかった。

厚い甲冑の隙間から金色の光が漏れ、肩の周囲には白い蒸気のような神気が漂っている。

両手で握る巨大な鉄槌には、古い傷が無数に刻まれていた。

それは敵を倒した数ではない。

主君へ届くはずだった刃を、何度も受け止めてきた証だった。

許褚の背後には、巨大な白虎の姿が浮かんでいる。

白虎は牙をむき、低い唸り声を響かせながら、暗闇の向こうをにらんでいた。

しかし許褚自身は、怒りに任せて暴れることはなかった。

ただ静かに、曹操のいる陣営の前へ立っている。

敵が一人なら、一人を止める。

百人なら、百人を止める。

たとえ大地が割れ、空から雷が落ちても、その場所を動くつもりはなかった。

許褚が神となるなら、それは勝利を与える神ではないのかもしれない。

背後にいる者を守り、迫る災いをその身で受け止める、守護の神である。

豪快な力の奥には、誰よりも単純で、誰よりも揺るがない忠義があった。

やがて敵軍の中から、一本の矢が放たれた。

矢は暗い空を切り裂き、曹操の陣へ向かって飛んでくる。

許褚は振り返らなかった。

巨大な腕を上げ、その矢を素手でつかんだ。

次の瞬間、背後の白虎が天へ向かって咆哮した。

地面が震え、敵兵たちの足が止まる。

炎の中に立つ許褚の姿は、まるで人の世へ降りた山そのものだった。

どれほど時代が乱れても、守ると決めた場所から退かない。

それが、神格化された許褚の力だった。

夜明けが近づくころ、戦場を覆っていた雲の隙間から、一本の光が差し込んだ。

その光を受けても、許褚は前を向いたままだった。

守るべき者が背後にいるかぎり、虎の神が眠ることはない。


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