朝、目が覚めた瞬間にふと思います。
「もしも今日一日だけ、全員が思ったことをそのまま口に出す世界になったら、どうなるんだろう」
想像しただけで、ちょっとドキドキしませんか。今日は、そんな「もしも」の世界をのぞいてみたいと思います。
朝の駅は、思った以上に大変なことになる
まず最初に混乱するのは、きっと通勤電車です。
「眠い」「帰りたい」「まだ月曜日か」「今日の会議、めんどくさい」
ホームのあちこちから、そんな声が聞こえてきます。ふだんは心の中で呟いている言葉が、全部音になって流れてくるのです。
満員電車では、さらににぎやかです。
「足、踏まれてる」「リュック、当たってるんだけど」「この人の香水、ちょっと強いな」
ところが、不思議なことに、全員が全員の本音を聞いていると、誰も怒らなくなるかもしれません。
「あ、みんな同じこと思ってたんだ」
そう気づいた瞬間、車内に小さな笑いが生まれる。そんな光景も、ありそうな気がします。
職場では「建前」が消えていく
会社に着いても、事態は落ち着きません。
上司が朝礼で話し始めます。
「今期の目標は、全員で力を合わせて……(早く終わらせて、コーヒー飲みたいな)」
カッコの中身まで、全部聞こえてしまいます。
会議では、さらに大変です。
「いい案ですね」と口では言いながら、「それ、去年も失敗したよね」と本音が漏れる。部下からは「その資料、何ページあるんですか……」という心の声が聞こえる。
でも、ここで少し考えてみたいのです。
本音が全部見えると、「言い方を考える」という行為そのものが、じつは優しさだったことに気づくのではないでしょうか。
思ったことをそのまま言えないのは、ずるいからではなく、相手を大切にしたいから。この世界では、その事実がいやというほど浮き彫りになりそうです。
恋愛は、意外とシンプルになる
一方で、いいこともあります。
たとえば、恋愛です。
「あの人のこと、ちょっと気になってるんだけどな」
そんな気持ちが、そのまま口から出てしまう。もちろん恥ずかしい。顔から火が出そうです。でも、相手の本音も同じように聞こえてきます。
「実は、私もずっと話しかけたかった」
もしそんなセリフが返ってきたら、一日だけの魔法のような世界でも、一生の思い出になりますよね。
駆け引きも、既読スルーの不安も、「あの返信はどういう意味?」と悩む夜もない。全部、口に出ているのだから、迷う余地がありません。
ただし、逆のパターンもあります。
「ごめん、友達としか思えないや」
これも、全部聞こえてしまうわけです。正直であることは、ときに優しく、ときに少し痛い。それが「思ったことを口に出す」ということなのかもしれません。
家族の会話は、じんわり温かくなる
もうひとつ、想像してみたいのが家族の場面です。
いつもは照れくさくて言えないことも、この日は全部こぼれ出ます。
「お母さん、毎日ご飯作ってくれてありがとう」
「お父さん、仕事おつかれさま」
「ほんとは、いつも心配してるんだよ」
ふだん「ありがとう」の一言すら言いにくい関係ほど、この世界では想いがあふれてしまうでしょう。
ちょっと泣けてきますよね。
文句や愚痴も出るでしょうが、それ以上に、言葉にならなかった感謝や愛情が、食卓のまんなかに広がっていく気がします。
ひとりのときの「心の声」は、案外やさしい
ここで、ふと気づくことがあります。
もし自分が、ひとりで歩いているときにも、思ったことが全部口に出るとしたら。
「今日はいい天気だな」
「あの雲、ソフトクリームみたい」
「あ、お腹すいた。コンビニ寄ろうかな」
きっと、私たちの心の声の多くは、こんなふうに、ささやかで、平和で、ちょっと間抜けなものなのだと思います。
悪口や不満ばかりが頭の中を占めているわけではない。実際には、小さな「いいな」や「おいしそう」が、案外たくさん詰まっているはずです。
この世界は、それを教えてくれるのかもしれません。
夜になって、静けさが戻ってくる
そして、夕方。
一日中、本音と本音がぶつかり合い、笑ったり、驚いたり、ちょっと気まずくなったりした世界も、少しずつ落ち着いてきます。
帰り道、街のあちこちから、こんな声が聞こえてきそうです。
「今日、疲れたな」
「でも、なんか楽しかったな」
「また明日からは、いつもの世界か」
そして、ほんの少しだけ、名残惜しそうな声も。
「たまには、ちゃんと言葉にしてみようかな」
おわりに
「思ったことを全部口に出す世界」は、きっとにぎやかで、気まずくて、ときどき痛くて、でもどこか温かい世界です。
全部が聞こえてしまったら大変だけれど、全部が聞こえたからこそ、わかることもある。
心の中にしまっている言葉の中には、いつか誰かに届けたら、その人をほっとさせる一言が、きっとあるはずです。
全部を口にする必要はありません。でも、今日、ひとつだけ。
「ありがとう」でも、「おつかれさま」でも、「それ、いいね」でも。
あなたの心の中にある、あたたかい言葉をひとつ、そっと口に出してみませんか。
もしかしたら、それだけで、いつもの世界が少しだけ、やさしくなるかもしれません。
ここまで読んで頂き、ありがとうございます
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