2026年4月14日火曜日
もしも赤備えの侍に出会ったら
霧の立ち込める森の中、
ふと足を止めたくなるような気配を感じることがある。
風は止み、音が消え、
まるでこの世界に自分ひとりしかいないような静けさ。
──その瞬間だ。
視線の先に、
赤い影が立っている。
最初は目の錯覚かと思う。
だが違う。
鉄のように重い存在感。
息を吐くたびに白く煙る空気。
そして、こちらを射抜くような鋭い目。
赤備えの侍だ。
歴史の中でしか見たことのないはずの存在が、
今、この現代の森に“いる”。
逃げるべきか、声をかけるべきか、
そんな判断すらできない。
なぜなら、あの視線は――
すでに戦場にいる者の目だからだ。
刀を構える姿に、迷いは一切ない。
そこにあるのは、生きるか、斬るか。
ただそれだけの世界。
もしも本当に出会ってしまったら、
きっと言葉なんて意味を持たない。
こちらの価値観も、常識も、
すべてが通じない“別の時代の人間”。
でも、なぜだろう。
恐ろしいはずなのに、
どこか惹かれてしまう。
あの一瞬にすべてを懸ける覚悟。
迷いを捨てた生き方。
そして、静寂の中に燃えるような存在感。
現代に生きる自分が忘れてしまった何かを、
あの侍は確かに持っている。
もしも赤備えの侍に出会ったら――
逃げるのが正解だろう。
でもきっと、心のどこかでこう思うはずだ。
「少しだけ、話をしてみたい」と。
その一瞬で命を落とすかもしれないのに。
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