ふと思った。
あのゆっくりとした時間を生きているカメに、
もしも人の文化をそっと重ねたら、どんな風景になるのだろうと。
小さな着物。
甲羅に合わせて少しだけ丸みを持たせて、
袖は短く、地面に擦らないように工夫する。
柄はやっぱり和風がいい。
静かな波模様か、それとも控えめな桜か。
派手すぎるより、どこか落ち着いた、時間に溶けるようなものが似合いそうだ。
そして、いざ着せてみる。
最初は少し戸惑うように、
ゆっくりと首を伸ばして、周りを見渡すカメ。
でも、数歩、また一歩と進むうちに、
いつものリズムを取り戻していく。
着物をまとったまま、
変わらずゆっくり、確かに前へ進んでいくその姿は、
どこか不思議で、少しだけ神秘的だった。
人間の「装う」という文化と、
カメの「ただ生きる」という静けさが、
ぶつかることなく、そっと重なっている。
もしかするとカメにとっては、
着物なんて意味のないものかもしれない。
けれど、見ているこちらの時間は、少しだけやわらかくなる。
ゆっくりでいいんだ、と。
急がなくても、ちゃんと進んでいるんだと。
そんなことを、
小さな着物を着たカメが、静かに教えてくれる気がした。
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