2026年5月15日金曜日

もしもすごく大きな犬がいたら

すごく大きな犬

もしも、すごく大きな犬がいたら。

それはもう、犬というより、
小さな山みたいに見えるのかもしれません。

家の前に座っているだけで、
屋根より少し高くて、
しっぽを振るだけで、
近所の木の葉がさらさら揺れる。

吠えたら大変です。

わん、と一声。

それだけで、
遠くの山にこだまして、
空を飛んでいた鳥たちが、
びっくりして向きを変えるかもしれません。

でも、きっとその犬は、
こわい犬ではない気がします。

体はとても大きいのに、
性格はやさしくて、
人間が近づくと、
そっと鼻先を地面に近づける。

その鼻先だけでも、
小さな車くらいあるかもしれません。

子どもが手を伸ばしてなでると、
犬はうれしそうに目を細める。

ただそれだけで、
町全体が少し明るくなるような気がします。

散歩も大変です。

普通のリードでは足りません。

川にかかる橋くらい長いリードを持って、
人間が犬を散歩させているのか、
犬が町をゆっくり歩かせているのか、
よくわからなくなりそうです。

犬が一歩進むたびに、
地面が少しだけ、どしんと鳴る。

でもその足取りは、
不思議なくらい静かで、
花壇の花を踏まないように、
ゆっくり、ゆっくり歩くのです。

もしも雨が降ったら、
その犬の下に入れば、
ちょっとした雨宿りができるかもしれません。

大きな体。
あたたかい毛並み。
静かに聞こえる寝息。

その近くにいるだけで、
なんだか守られているような気持ちになる。

大きいということは、
こわいことばかりではないのだと思います。

大きいからこそ、
やさしさも大きく見える。

大きいからこそ、
さびしい人を、まるごと包み込める。

夜になって、
その犬が町のはずれで丸くなって眠ったら、
まるで丘がひとつ増えたみたいに見えるでしょう。

月明かりが背中を照らして、
毛並みが銀色に光る。

町の人たちは、
窓からそっとその姿を見て、
「ああ、今日もいてくれる」
と思うのかもしれません。

もしもすごく大きな犬がいたら。

それはきっと、
町を壊す存在ではなくて、
町の不安を静かに受け止めてくれる存在。

あまりにも大きくて、
あまりにもやさしい。

そんな犬が、
どこかに一匹くらいいてもいいなと思います。


ここまで読んでくれて、ありがとうございます

PR
楽天市場

よろしければ、
のぞいてみてください


0 件のコメント:

コメントを投稿