もしも、すごく大きな犬がいたら。
それはもう、犬というより、
小さな山みたいに見えるのかもしれません。
家の前に座っているだけで、
屋根より少し高くて、
しっぽを振るだけで、
近所の木の葉がさらさら揺れる。
吠えたら大変です。
わん、と一声。
それだけで、
遠くの山にこだまして、
空を飛んでいた鳥たちが、
びっくりして向きを変えるかもしれません。
でも、きっとその犬は、
こわい犬ではない気がします。
体はとても大きいのに、
性格はやさしくて、
人間が近づくと、
そっと鼻先を地面に近づける。
その鼻先だけでも、
小さな車くらいあるかもしれません。
子どもが手を伸ばしてなでると、
犬はうれしそうに目を細める。
ただそれだけで、
町全体が少し明るくなるような気がします。
散歩も大変です。
普通のリードでは足りません。
川にかかる橋くらい長いリードを持って、
人間が犬を散歩させているのか、
犬が町をゆっくり歩かせているのか、
よくわからなくなりそうです。
犬が一歩進むたびに、
地面が少しだけ、どしんと鳴る。
でもその足取りは、
不思議なくらい静かで、
花壇の花を踏まないように、
ゆっくり、ゆっくり歩くのです。
もしも雨が降ったら、
その犬の下に入れば、
ちょっとした雨宿りができるかもしれません。
大きな体。
あたたかい毛並み。
静かに聞こえる寝息。
その近くにいるだけで、
なんだか守られているような気持ちになる。
大きいということは、
こわいことばかりではないのだと思います。
大きいからこそ、
やさしさも大きく見える。
大きいからこそ、
さびしい人を、まるごと包み込める。
夜になって、
その犬が町のはずれで丸くなって眠ったら、
まるで丘がひとつ増えたみたいに見えるでしょう。
月明かりが背中を照らして、
毛並みが銀色に光る。
町の人たちは、
窓からそっとその姿を見て、
「ああ、今日もいてくれる」
と思うのかもしれません。
もしもすごく大きな犬がいたら。
それはきっと、
町を壊す存在ではなくて、
町の不安を静かに受け止めてくれる存在。
あまりにも大きくて、
あまりにもやさしい。
そんな犬が、
どこかに一匹くらいいてもいいなと思います。
ここまで読んでくれて、ありがとうございます
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