2026年6月4日木曜日

もしも卑弥呼を神格化したら

もしも卑弥呼を神格化したら

もしも卑弥呼を神格化したら、
彼女はただの女王ではなく、
霧の向こうから国を見つめる、
静かな神様のような存在になると思う。

大きな声で命令する神ではない。
剣を振り上げて、敵を倒す神でもない。

ただ、夜明け前の薄い霧の中に立ち、
人々の不安も、争いも、祈りも、
すべてを黙って受け止めている。

卑弥呼のまわりには、
白い布が静かに揺れている。

足元には古い土器が並び、
遠くでは小さな火が揺れ、
人々はその炎を見ながら、
今日という日が無事に終わることを願っている。

彼女の瞳は、
人を見ているようで、
もっと遠いものを見ている。

空の動き。
風の向き。
雨の匂い。
人の心の揺れ。

そういう目に見えないものを、
卑弥呼は静かに読んでいる。

もし神格化された卑弥呼がいるなら、
その姿はきっと、
金色に輝く派手な女神ではない。

朝霧の中で、
白と淡い金の光をまとい、
人々の前にふっと現れるような存在だと思う。

近づきすぎることはできない。
けれど、遠くから見るだけで、
なぜか心が静かになる。

卑弥呼は、国を力でまとめたのではなく、
人々の心の中にある恐れを、
祈りへ変えていった人だったのかもしれない。

争いが続く時代に、
誰かが空を見上げ、
誰かが火を守り、
誰かが神の声を聞こうとした。

その中心にいた卑弥呼は、
人でありながら、
人では届かない場所に立っていた。

もしも卑弥呼を神格化したら、
それは勝利の神ではなく、
沈黙の神だと思う。

声を荒げず、
怒りを見せず、
ただそこにいるだけで、
人々に「大丈夫だ」と思わせる神。

古い時代の闇の中で、
彼女のまわりだけに、
細い光が降りている。

その光は、強くはない。
けれど消えない。

卑弥呼という名前には、
そんな不思議な静けさがある。

人間だったのか。
女王だったのか。
巫女だったのか。

本当の姿は、
今も霧の奥に隠れている。

だからこそ、想像してしまう。

もしも卑弥呼が神になったなら、
彼女は今もどこかで、
朝霧の向こうから、
この国を静かに見つめているのかもしれない。


ここまで読んでくれて、ありがとうございます

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