2026年2月25日水曜日

もしも世界が静寂で満ちていたら

もしも世界が静寂で満ちていたら、耳に届くのは自分の呼吸と心臓の鼓動だけになるだろう。
街のざわめきも、車の音も、誰かの話し声も、すべて消えてしまった世界。

最初は寂しさに息が詰まるかもしれない。
音がないことは、思考を剥き出しにして、心の奥まで響いてくる。
自分の内側にいる自分と、向き合わざるを得なくなる。

でも、やがて静寂は優しさに変わるかもしれない。
風の揺れる木の葉の感触、日の光の温かさ、遠くの山の輪郭。
言葉がなくても、世界はそれだけで語りかけてくる。

人と人の距離も、少しだけ近くなるだろう。
声で伝えなくても、視線や仕草で、互いの存在を感じられる。
触れること、感じること、ただそれだけで十分になる世界。

静寂は孤独でもあるが、同時に自由でもある。
思考は羽を得て、心は軽く、時間はゆっくりと流れる。
誰も急かさず、誰も遮らず、ただ存在することが許される。

もしも世界が静寂で満ちていたら、私は今日も、
呼吸のリズムに身を委ね、光と影の間をゆっくりと歩くだろう。
音のない世界の豊かさを、静かに味わいながら。

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