2026年10月8日木曜日

もしも猫が一日だけ人間の言葉をしゃべれたら

 わが家には、いつも窓辺で丸くなっている猫がいます。

名前を呼べば、尻尾の先だけで返事をする。ごはんの時間になると、これでもかというくらい足元をぐるぐる回る。何を考えているのかわからないのに、なぜか目が合うだけで心が少しゆるむ。そんな不思議な存在です。

ふとした夜、こんなことを考えました。

もしも猫が、たった一日だけ人間の言葉をしゃべれたら。

今日はそんな「もしも」の話を、のんびり書いてみようと思います。

朝いちばんに言われそうなこと

きっと最初のひとことは、こうです。

「おはよう。ごはん、まだ?」

挨拶の次にごはんの催促。ここは絶対に変わらない気がします。いつも朝の五時半ごろに、枕元でそっと前足を乗せてくるのは、「おなかがすいた」という切実な訴えだったのでしょう。

それがはっきり言葉になると、「あ、ごめん、そんなに待たせてたんだ」と素直に思えそうです。

「それ、なに?」の質問攻めが始まる

人間の言葉がしゃべれたら、猫はきっと聞きたいことだらけだと思います。

「さっきから光ってる四角いやつ、なに? 私より大事なの?」
「どうして毎朝、あの熱い水を飲んでるの?」
「あのうるさい機械(掃除機)、なんで毎週出してくるの?」

スマホを見ている私に、ちょっと不満そうに言う姿が目に浮かびます。そう言われたら、思わずスマホを置いてしまうでしょう。

本当に聞きたいのは、あのこと

質問攻めのあとで、ちょっと真面目な顔をして猫が言うのです。

「ねえ、私のこと、好き?」

答えは決まっています。もちろん、大好きです。

でも猫のほうは、たぶんもう知っているはずです。帰宅するとそっと近づいてくること。疲れて座り込んだ膝に、黙ってのってくること。落ち込んだ夜に、何も言わず隣にいてくれること。

言葉がなくても、ずっと伝えてくれていたんだな、と思います。

意外と辛口かもしれない

いっぽうで、言葉がしゃべれたら猫はけっこう辛口かもしれません。

「その服、昨日も着てたよね」
「夜更かしはよくないって、毎晩言ってるのに」
「おやつ、人間のほうが多く食べてない?」

痛いところを突かれて、ぐうの音も出ないでしょう。猫は正直です。お世辞なんて言いません。

だからこそ、「今日のごはん、おいしかったよ」と言われたら、きっと何倍もうれしいはずです。

夜、窓辺でのんびり話す

一日の終わり、部屋の明かりを少し落として、窓辺に二人で座る。

「今日は楽しかった?」と聞くと、猫は少し考えて、こう答えるかもしれません。

「うん。いつもと同じで、すごくよかった」

特別なことは何もない、いつもの一日。それでも猫にとっては、ごはんがあって、日向があって、そばに私がいる、それだけで満点なのでしょう。

そう聞いたら、私のほうが救われてしまいそうです。

次の日、また言葉がなくなっても

翌朝、猫はまたいつもの「ニャア」に戻ります。

でも、きっともう大丈夫です。言葉がわからなくても、尻尾の揺れ方や、目の細め方や、喉を鳴らす音で、何を言いたいのか少しずつ読み取れるようになる気がします。

もしかしたら猫は、一日だけしゃべれる代わりに、私に「ちゃんと見ていてね」と伝えたかったのかもしれません。

おわりに

猫が人間の言葉をしゃべれたら、きっと世界はもっと賑やかになります。

でも今のままの、言葉のない距離感も、私はとても好きです。

言葉にならない気持ちを、そっと受け取る。そんな時間があるから、猫と暮らす毎日は、どこかやさしいのだと思います。

今日もうちの猫は、窓辺で丸くなっています。

名前を呼ぶと、尻尾の先がちょこんと動きました。

きっと、「はいはい、聞こえてるよ」という返事です。

ここまで読んで頂き、ありがとうございます

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